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~EXOFIELD THEATERで浸る映画の世界~

XP-EXT1 / 地獄の黙示録 2020.August

XP-EXT1 / 地獄の黙示録
公式サイト

今回は、新しく発売されたワイヤレスシアターシステム“EXOFIELD THEATER”「XP-EXT1」を使って、映画ソフト再生の体験をレポートしよう。

まず始めに、ヘッドホン特有の問題点を指摘しておきたい。その話をすることで、XP-EXT1の価値がより明確になるからだ。

一般的なヘッドホンは、右用ドライバーは右耳に、左用ドライバーは左耳にそれぞれ据えられて音を出す。その結果、音は頭の上部辺りで結合される。これを専門的に「頭内定位」と言うのだが、スピーカーと対峙しているような前方定位にはならず、音楽のサウンドステージもわかりにくい。

XP-EXT1 / 地獄の黙示録

それを解決するべくJVCケンウッドが開発したのが、「EXOFIELD」(エクソフィールド)なる技術。詳細は技術サイトを参照いただきたいが、使用者個人個人の頭部伝達関数を独自の信号計測とデータ処理で行なうことで、先の課題を解決し、頭外定位や立体感の再現に成功した画期的なテクノロジーなのである。

今回はこのXP-EXT1を使って、フランシス・フォード・コッポラ監督の79年製作の大作『地獄の黙示録/ファイナルカット』のドルビーアトモス再生にトライしてみたい。

XP-EXT1の設定はいたって簡単かつスマートだ。プロセッサーとヘッドホンを同梱のケーブルで接続し、ヘッドホンを装着した状態でテスト信号を再生するだけ。2分もかからずに計測と計算処理が完了し、サラウンド再生がすぐに可能となる。

本体のオン/オフやボリューム操作はヘッドホン側でできるが、iOsやandroidの対応スマホ、またはタブレットを準備することで専用アプリによる細かな操作(再生モードやセンターチャンネル、サブウーファーチャンネルの音量の増減)も可能だ。

コッポラ監督が私費を投じてまで完成にこだわった「地獄の黙示録」は、ベトナム戦争の不条理と狂気の中で、一人の軍人が経験した不可思議な任務の過程を描いた物語だ。

映画の冒頭、ナパーム弾で焼き払われたジャングルのシーンの背景で流れるドアーズの「ジ・エンド」はたいへん印象的。サイケデリックなその演奏の中で、ヘリコプターのローター音らしきゆっくりとした回転音を頭上に感じることができる。ドルビーアトモスらしさが早くもオープニングで実感できた。

本作で最も有名なシーンは、ベトコン村を早朝に襲撃した『ヘリコプター・アタック』だ。ワーグナーの楽劇<ニーベルングの指輪>4部作の中の<ワルキューレの騎行>を大音量で流しながら、武装した9機の軍用ヘリで奇襲攻撃するのである。重厚な音楽と共に前後左右に飛び交うヘリコプターの様子がダイナミックに描かれるのがわかる。「EXOFIELD」の性能と効果の素晴らしさを実感できるシーンである。頭上から急降下するヘリコプターの様子はもちろん、機関銃の音の歯切れよさも生々しい。ナパーム弾の爆撃の威力は、サブウーファーのレベル調整でさらに迫力を増す。一方ではセリフの前方定位も明確だ。

もうひとつの注目シーンは、マンゴーを獲りにウィラード大尉等がジャングルに分け入っていくシーン。鬱蒼とした茂みの中から突如トラが現われて一目散に哨戒艇へと戻るのだが、この場面のジャングル内のサラウンドサウンドがひじょうに濃密なデザインで素晴らしい。虫や動物の鳴声がこだまし、鳥類が羽撃く音の軌跡がしっかりとサラウンドしている。その再生音からは、まさしく淀んだ空気とジメッとした湿気が醸し出され、見ているこちらも汗が吹き出してきそうなリアリティを感じた。

初めて試したXP-EXT1だが、ここまで臨場感に溢れたサラウンド感が味わえるとは想像しなかった。これだけ高いパフォーマンスならば、大きな音が出せない夜間の映画観賞時だけでなく、積極的に普段使いもしたいと感じ入った次第である。

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