ダイブ・イントゥ・ザ・ムービー
~EXOFIELD THEATERで浸る映画の世界~

XP-EXT1 / バック・トゥ・ザ・フューチャー 2020.December


公式サイト

そもそも僕はBlu-rayプロデューサーであると同時に、ビデオディスク時代からの大のソフト愛好家で、自宅でも100インチスクリーンと7.1.2chのドルビーアトモスシステムで映画を楽しんできた。ところが大きな問題が発生。家を改築することになり、オーディオ用の防音対策のない仮住まいに移らねばならなくなったのだ。隣家との距離がかなり近く、AVアンプやサウンドバーでのサラウンド再生も厳しそうで、これではディスクのレビュー記事が書けない・・・そう悩んだタイミングで目に留まったのが、ヘッドホンで7.1.4chまでのサラウンド再生に対応するいうJVC「ワイヤレスシアターシステム EXOFIELD THEATER(エクソフィールドシアター)」XP-EXT1だった。これこそ今買うべきアイテムでは?と預金通帳と相談していたところに、まさかの本コラムの執筆依頼が!ふたつ返事で快諾した数日後、さっそく本体が我が家に送られてきた。

ワクワクしながらさっそく開封。まずはBDプレーヤーと有機ELモニタの間にプロセッサーをHDMIで接続。続いてプロセッサーとスマホをBluetoothで接続し、無料の専用アプリ「EXOFIELD THEATER 」で設定を開始した。プロセッサーとヘッドホンを付属の専用ケーブルで接続し、ヘッドホンを装着した状態でテストトーンを再生。するとヘッドホン内蔵のマイクが耳穴内の特性を測定し、最適な音響調整が行われる仕組みだ。非常に高度な信号処理のはずだが、所要時間はわずか2分ほどだから驚く。

はやる気持ちを抑えて、まずは同梱のデモBDに収録されたドルビーアトモストレーラー「AMAZE」を再生。森にさえずる鳥たちの声、頭の周りをぐるりと一周する鳥の羽ばたき、身体を揺るがす雷の重低音、頭上から降り注ぐ雨音・・・ヘッドホンから朗々と再生されたのは、紛れもないドルビーアトモスサウンドだ!これは期待できそうだゾ。

続いて再生したのは、手元に届いたばかりのUHD BD『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だ。映画冒頭のチャプター1、あまりにも有名な時計のシーン。カメラのパンニングにあわせて無数の時計がキレイに移動。さらに音場後方にも時計が次第に増えていくのが、このヘッドホンだと手に取るようにわかる。アンプが吹き飛ぶシーンも、徐々に上がるハムノイズの音量が、迫り来る爆発の轟音を予感させてゾクゾク。

チャプター5からのタイムトラベル実験では、フロントからリアへと観る者の身体を貫いて、デロリアンが時間の向こう側に飛び立つ! デロリアンとテロリストのカーチェイスでは車の移動感以上に、マシンガンの発砲音と弾着音が音場の前後にはっきり分かれて聞こえるのが印象的。マーティが1955年に飛んで納屋に突っ込んだ直後、音場にはそれまでとは打って変わって静寂が訪れる。遠くの犬の鳴き声や虫たちの声がサラウンド空間にさりげなく広がり、音響演出のダイナミックな緩急に唸った。

チャプター14や16のパーティ場面では、カメラワークにあわせてバンド演奏の響きが広がっていくのが面白い。マーティが演奏するジョニー・B・グッドもパワフルだ。そして時計台広場で「バック・トゥ・ザ・フューチャー」するチャプター17では、頭上でめまぐるしく定位を変える稲妻の轟音と、観客の周囲を吹き荒れる嵐、そしてアラン・シルベストリのスリリングなBGMが渾然一体となってサスペンスを盛り上げる!

まるまる一本の映画を見終えて感じたのは、映画におけるセリフ・効果音・音楽の要素、その原音と定位を忠実に聞かせてくれるシステムだということ。サラウンド再生の方向性は、アプリのGUI画面がそうであるように、朗々とした響きの大劇場ではなく、小規模なホームシアターの音響を巧妙にシミュレートしたものになっていると言えるだろう。ゆったりと柔らかなイヤーカップの恩恵もあってか、ヘッドホン特有の疲れを感じなかったのもうれしいポイントだった。

さてこうなると、積ん読ならぬ「積ん見」のソフトたちを眺めるのが楽しくなってきた。次は何を観ようかな? お楽しみはこれから、なのだ。

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